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パパナッシュ

パパナッシュ、という料理をご存知だろうか。
生地にチーズを練り込み、揚げたドーナツ状のお菓子であり、

最近ではロランベリーのソースをかけたものが主流で、主に癒し手から絶大な支持を得ている料理である。
 

と、まぁ、前置きはここまでにして本題に入りたいと思う。
 

元冒険者、現新米記者である私に、上司から仕事が入った。
「月に一回のペースでいいから、何か記事を書いてくれ」と。
「何か」と言われても、書くのは思いつかない。一週間悩みに悩んだ結果、断ろうとしていたときだった。

 

友人から、「美味しいものを食べよう」と言われたのだ。
連れていかれた先は、リムサ・ロミンサの有名なレストラン、ビスマルク。
かと思いきや、なんて事のない、元冒険者が経営するレストランだった。
「ここの店主がイケメンでねー!」なんて言う友人からして、店主目当てで誘ったのだろう。
まぁ、一見した感じ、人当たりの良さそうな店主だったが。

 

私と友人は気づけばパパナッシュを頼んでいた。
私は、目の前に出されたパパナッシュを一口口に頬張る。
揚げたてのサクッとした生地に、甘酸っぱいロランベリーのソースが絶妙で美味しい。
黙々と食べ続け、ついに無くなってしまったとき、それまで黙っていた友人が口を開いた。

 

「マスター、これマスター作?」
 

なんてことを言うんだ、と思ったが、店主の方も様子がおかしい。
 

「いいや、実は冒険者の子をシェフとして雇ってみたんだ。調理師ギルドの人間だけどね」
 

しかし、このパパナッシュはとても美味しかった。このお店の記事を書いていいくらいに。
そこで、私は気づいてしまった。ここでなら、あの記事の話をかけるのではないか、と。
月一程度でもいい宣伝効果になると思い、店主に直談判。すると、あっさりOKとのお返事。


こうして、冒頭の記事に戻る。
 

「……あのサクッとした食感と甘酸っぱいソースの組み合わせはまさに黄金律。ぜひ一度、ご賞味あれ。っと」
 

サラサラ、と書いていたペンを置き、上司に持っていくと、これまたあっさりOK。
まぁ、少しの手直しは入ったが、概ねそのままの形で雑誌に載ることになった。
雑誌が出来上がった頃に気がつく。

 

「そういえば、調理師さんのお名前聞いてないなー」
 

次回の記事で、確認しよう。
 

 

【調理品紀行録】パパナッシュ
 

 

というところで、今回の取材メモを終える。ガガガ……ピー……。

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